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谷隆一の「僕だってこんな本を読んできたけど…」

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『たったひとりのワールドカップ 三浦知良1700日の闘い』 一志治夫

2009/10/05

チャラ男に見えて、実はストイック。
「なあ、リュウさん」とぼくも言ってみよう

前項で中村俊輔選手のことを書いたので、今回は、三浦知良さん(カズ)を。

いや、別に中村選手に関連してカズを取り上げる必然性はないし、中田英寿さんはじめ、有名なサッカー選手はいくらでもいるわけです。なのになぜカズなのかというと、単に私がファンだからです。

カズについて、ぐだぐだ書くことは避けます。数行で自分の思いを言い切れる自信はないし、カズのことを説明する必要もないと思うからです。「チャラチャラしている」と誤解している人も多いですが、そういう印象を持っている方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。

さて、本書(幻冬舎)について書き出せば切りがないので、できるだけシンプルにまとめます。
いわゆるドーハの悲劇(アメリカW杯予選の敗退)からフランスW杯での代表落選までのカズを追ったノンフィクションで、カズへのインタビューを中心に構成されています。特に印象的なのは、やはり、フランスW杯の最終予選を戦う過程です。

日本はまさに崖っぷちの状況に立たされ、加茂周監督の更迭、岡田武史監督体制への移行を経て、なんとか3位決定戦を勝つのですが、その間、カズは長らく不振に喘ぐわけです。ご本人は不振ではないと振り返るのですが、得点できていなかったのは事実で、それが結局「カズ不要論」に発展していくのですね。

そんな苦境のなか、カズは何度も自分にこう言い聞かせるんですね。

「こんなところじゃ死ねねえよ」

アラブ首長国連邦とのアウェーでの試合は、40度近い暑さの中。1回ダッシュをすると疲れ果ててしまうほどの状況だったようですが、「根性で『ワールドカップに行きたくねえのか」って言い聞かせて走っていた」そうです。

また、ウズベキスタンとのアウェー戦では、敗色濃厚のなか、走り回るんですね。結局引き分けるのですが、ここでも例のセリフが出ます。本書のまま抜粋します。

「後半に入ってから『こんなところじゃ死ねねえよ、いままでも何とかしてきたじゃないかよ、何とかしなきゃなんねえんだよ』と何回も大きな声で叫んでいた。なぜかわからないけど、自分で『なあ、カズさん』とか呼びかけたりしながらね。」

この心意気、いつも感動します。この人がワールドカップに出場できず、なぜ日本はまた、岡田監督でワールドカップを戦おうとしているのか......。

あ、いや、話がそれました。
ともあれ、ぼくも、今度苦しい場面に出くわしたら「なあ、リュウさん」と自分を励ましてみようと思います。人からそんなふうに呼ばれたことは、一度もありませんけどね。

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