09/09/09
ハチミツさん一家のパパさんが社長を務める『株式会社Haney Bee』もいよいよ本格的に稼動をはじめました。
そして来週、はじめてのお給料日がやってきます。
お店の開店準備から力をあわせてがんばってくれているスタッフのみなさんにしっかりお給料を支給しなくては...。
ところが、パパさんは今までサラリーマンとしてお給料をもらったことしかありません。「お給料を払う」とひとくちにいってもいろいろあるんですよ! パパさん!!
「給与明細ってよく見るとややこしいなあ......。いろいろ天引きしないといけないし」
......あらためて給与明細票をマジマジと眺めながら......
「会社で払う社会保険料は口座振替にしたけど、所得税はどうするんだ......?」
......従業員のお給料から天引きした所得税の扱いに迷うパパさん...
従業員の給与から天引きした所得税は、給与を支払った者が従業員全員分をまとめて国へ納付する責任があるのです。この制度を「源泉徴収制度」といいます。
この納付を怠ると、過怠金などが給与を支払った側に課せられることになります。
◎源泉徴収した所得税の納付期限は原則翌月10日です。
お給料は毎月決められた日に支給しますが、各支給月の翌月10日までに各月に預かった源泉所得税を指定の納付書で税務署に納付します。
前回説明したように、設立届出と同時に「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出すると、後日源泉所得税についての説明書類と納付書が送付されてきます。
届出書類の提出が遅いと、納付書が最初の納付時期に間に合わないこともあるのでその場合は税務署から取り寄せることになります。
この納付が2回連続して納期限に遅れてしまうと延滞税が課せられますので十分注意が必要です。納期限は厳守してください。
◎給与を受ける人が常時10人未満なら納期の特例を活用しよう!!
納付期限は原則翌月10日ですが、給与支給者が常時10人未満の場合は、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書兼納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書」という長い名前の届出書を所轄税務署に提出しておくと、半年ごとの納付が認められるので活用することをおすすめします。
この場合、
(1)1月から6月の間に支払った分の合計は、7月10日までに納付
(2)7月から12月の間に支払った分の合計は、翌年1月20日までに納付
となりますので、毎月納期限を気にする必要もなくなります。
「そっかあ。 うちの会社は10人未満だから半年に一度で大丈夫そうだね!」
「だけど、天引きしたお金は使っちゃだめよ! 半年後にまとめて払うんだから!」
......さすが、財務大臣ママさん。そのとおりです。......
納期の特例の場合、半期に一度にまとめて納付するため意外に高額な納付額になります。
毎月こつこつ納付するほうが安心だとおっしゃる社長さんもいますので、その場合は原則納付をおすすめします。
◎源泉所得税はあくまでも「預り金」です。
会社にとって源泉所得税はあくまでも従業員からの「預り金」です。 従業員がたくさんいる会社ではこの「預り金」が多額になるため、毎月納付していかないと会社の運転資金に流用されてしまったり、運用金利を得てしまうことにもなりかねません。
そのため、預かった所得税はただちに国へ納付することが義務付けられているのです。
ただし、従業員が10人未満であれば預かっている金額もさほど大きくないため、事務処理の軽減も考慮して、半期に一度の納付を特例として認めているのです。
◎デザイン料や原稿料などにかかる源泉税は原則納付のみ
納期の特例が認められるのは、給与や賞与、弁護士、税理士等に対する報酬等など一部に限られ、それ以外の個人のデザイン料や執筆料、その他の外注者への支払いなどに対する源泉徴収税額は原則どおり毎月納付となります。
「サラリーマンのときは手取り額しか気にしてなかったけど、会社が天引きして納付するから、国にとって徴収もれにはならないんだな!」
......そのとおり! よくできたシステムなのです。......
「でも納税してるっていうより、いつのまにか税金をとられてるって感じね!!」
......手厳しいお言葉ですが、確定申告の手間が省けてるわけですし...
「税金のことなんか気にならないくらい稼ぐぞ~~!!」
「めずらしく頼もしいわ~ 」
......"めずらしく"がひとこと余計です!......
09/08/06
ハチミツさん一家のパパさんは、念願だったケーキショップを開くため、勤めていたホテルを退職、先日、『株式会社Haney Bee』の設立登記手続きも完了しました。
いよいよ本格的にお店の準備にとりかかっているパパさんは、おいしいケーキのかなめになるこだわりのフルーツや製菓材料を求めて全国を飛び回り、試作品作りを始めています。
「お店の工事も終わったし、材料の発注も済んだし、開店スタッフも揃ったし...。あとはおいしいケーキを作るだけだな!」
......机の上にひろがっているたくさんの請求書や領収書をみていたママさんが。。
「最近いろいろ支払いが多いみたいだけど、お金の管理は大丈夫?!」
......今日もシビアなポイントを指摘してくるママさん。。。
「大丈夫!! 通帳とにらめっこして、残高は確認しているし、お店だってレジを買ってあるし。万全だよ!」
......自信満々ですが。。通帳とにらめっこだけでホントに大丈夫ですか?
「それなら安心ね!! それに今年は支払いが多いから赤字だものね!」
......え~~~っ?! 頼りのママさん! しっかり見てください!
会社を設立して新しいお店を始めるとなると、いろいろ忙しくて地味な作業は後回しになってしまいがちですが、その地味な作業が後々大切になってくるのです。
◎設立当初が赤字なら青色申告法人になるべし!!
――設立1年目が赤字になるのはよくあることです。
「来年、利益がちゃんとでるようになったらしっかり管理して、申告しよう!!」 なーんて考えている方もいるようですが......。 それではせっかくの青色申告の特典が活かせません。
赤字であるなら、赤字であることをしっかり証明しておけば、翌期以降利益がでたときに相殺してくれる制度《青色欠損金の繰越控除制度》があるのです。
"赤字であることを証明する" とは、ざっくり言えば、複式簿記による正確な帳簿に基づいた法人税の申告書を申告期限までに提出するということです。
青色事業年度において生じた欠損金(つまり赤字相当部分)は、その翌事業年度以降の利益を限度として相殺してくれます。しかも、繰越期限は7年間(黒字化するまでに時間がかかっても大丈夫! あまり時間がかかるのも考えものですが。。)
簡単に言えば、1期目の欠損が50万円で、2期目の利益が80万円なら、80万円から50万円を控除した30万円に法人税が課せられることになるということです。
そのためには、青色申告法人であることが大前提です。
◎青色申告法人になるには?
新設法人の場合は、通常、設立の日から3カ月以内に「青色申告の承認申請書」を所轄の税務署に提出すればOKです(設立初年度が3カ月未満の場合は例外がありますのでご注意ください)。
さらに、青色申告の要件としては、帳簿の記帳など経理関係の整備も必須条件です。
単に領収書や請求書を見せて「お金をたくさん支払ったから絶対赤字なんです!」というだけでは青色申告の特典を受けることは認められません。
◎事務手続きはまとめて一気に!!
法人を設立したら、上記の申請と同時に、*設立届出書 や *給与関係の届出書 などを税務署に提出しておく必要があります。このほかにも必要に応じて提出書類がありますので、それぞれ確認しておかなければなりません。
社会保険への加入の際には設立届出書控えの提示が求められますので、必ず税務署の収受印が押された「控え」を保管しておく必要もあります。
さらに給与関係の届出を怠ると、給与から天引きする源泉所得税の納付手続きにも影響がでて、思わぬ延滞税が発生したりしますので要注意です。
また、税務署だけでなく、地方税の所轄事務所にも届出が必要です。例えば東京23区であれば、各都税事務所になります。
こういった届出書関係の手続きはめんどうで地味な作業ですが、提出期限もあることなので後回しにせずに早めに対応しましょう!
会計事務所では、これらの届出書類はほとんど電子申請(e-Tax)で行うことが可能になっていますので、税理士にご相談いただくのも近道です。
「大変だ~。ひと月前に登記が完了しているから急がなきゃ!」
......急に慌てだしたパパさんを見て。。。
「大丈夫よ! 私だってOL時代にちょっとだけ経理やったことあるし。」
......OL時代とすると、ざっと20年前ですか? ちょっと心配ですが、期待しましょう!
「これからはママが株式会社Haney Beeの"財務大臣"だね!!」
09/07/07
パティシエとして働いてきたハチミツさん一家のパパさんは、念願だった自分のお店を開くことを決意して、勤めていたホテルを退職。
自分のお店を持つ夢のために貯金もしてきたし、最適な場所も見つけました。
しかし会社をつくって社長となるからには、やらねばならないことがテンコ盛りの日々です。
従業員を雇ったり、銀行や仕入先との交渉をしたり、役所の手続もやらなくてはなりません。
毎日慣れない仕事に奮闘しています。
「明日、司法書士さんに会社の設立手続のお願いに行ってくるぞ!」
「いよいよねー。パパも"社長"かぁー」
......パパさんが準備している書類を見ながら...
「あら? 会社の決算月が12月になってるけど、いいの?」
......のんきに感慨にふけっているわりにはスルドイ指摘...
「だって、わかりやすいし。決算っていえば12月とか3月だろう」
......国内法人では3月決算が多いのは確かです...
「でも、12月は1年でいちばん忙しい時だし」
......ケーキ業界にとってクリスマスは勝負の季節ですね...
「それに、いま9月だからすぐに決算になるんじゃない?」
......そのとおりです。 またまたスルドイ!...
法人を設立するときに決めるべきことはいくつかありますが、決算月の決定には税金の面からも検討すべきポイントがいくつかあります。
◎決算月は繁忙期を避けるべし!
――決算が近づくと、決算対策を考えたり、在庫のチェックや支払関係のチェックなど、日頃よりも多くの煩雑な業務が発生します。
なるべくなら忙しい時期をさけるのが賢い選択といえます。
◎開業日から最初の決算月まではなるべく長いほうがベター!
――例えば10月に会社を設立するのに、12月決算にしてしまうとたった2カ月で決算となります。
わずか2カ月とはいえ、通常の決算処理と同じ手続が必要となり、手間ひまがかかるだけでなく、その後の消費税の納税義務にも影響してきます。
消費税法では資本金が1000万円未満の法人は設立第1期と第2期は消費税の免税事業者となる規定があります(会社を設立しようとお考えの方はよくご存知だと思います)。
つまり、1期目と2期目の免税期間が長いほうが、それだけ節税につながります。
たった2カ月でも第1期と考えますからね。
しかも、この2カ月でおよそ200万円の売上があれば、年換算で1000万円超の規模となり、第3期目(設立から14カ月後)から消費税の課税事業者となります。
なんだか少し損した気分になりませんか?
☆ただし、輸出業者などやその他特定の場合はこの考え方にはあてはまりませんのでご注意ください。
◎資金繰りで考えるなら納税時期の集中を避けるのもひとつの考え方!
――中小法人の場合、決算期から2カ月以内に、法人税、消費税、地方税を納付しなければなりません。同じ時期に、労働保険の納付や年払いの保険料などの支払が重なると、わかってはいても資金的にはプレッシャーを感じることにもなります。よって、あらかじめわかっている支払時期を避けておくのも得策なのです。
「なるほど~。とりあえず年末だから決算ってわけじゃないんだ! そうすると、2月はバレンタイン、3月はホワイトデー、10月はハロウイン、12月はクリスマス......。会社が設立できるのも9月だし。よしっ! 決算は8月にしよう!」
「そうね!! わたしもフラワーアレンジの仕事を続けるけど夏ならそんなに忙しくなくて決算の手伝いもできるわ!」
「えっ?! ママはお花屋さんの仕事辞めないの?」
「もちろん! パパは会社辞めたし、お店の開業資金の足りない分も借金したし、会社が軌道にのるまでは安心できないもの!」(きっぱり...)
......頼もしいパートナーです...