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前屋毅の「世の中通信 ひっかき傷」

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戦後最悪GDPと総選挙

2009/05/20

「おかしいんですよ」と、大手マスコミの経済部幹部がいった。「12月危機」や「3月危機」とマスコミは、さんざん経済危機を煽ってきた。景気の悪さは続いているものの、マスコミが指摘したような「危機」という状況にまではなっていない。つまり、マスコミの予測は外れたことになる。それは、そんなもんだ、としても、そうしたマスコミの報道に対する中央官庁の対応が、今回は「おかしい」というのだ。

悲観好きのマスコミは景気低迷となれば、もっと悪くなる、最悪になる、と煽るのが〝癖〟になってしまっているようだ。そんなマスコミに対して、いつもなら当局のほうから「あんまり煽るなよ」というプレッシャーがかかってくるのが常なのだという。ところが今回だけは、そのプレッシャーはまったくないそうだ。危機を当局も認めざるをえなかったのか、それとも、マスコミ以上に危機を煽りたかったのか、のどちらかだ。

麻生太郎内閣は、経済対策でもって低迷していた支持率を回復した。「ばらまき」ともいわれる経済対策のシナリオを書いたのは、もちろん、役人である。そして、「ばらまき」によって官僚の力も復活した。「ばらまき」を統括するのが官僚であり、どこに「ばらまき」を配分するのかは、結局、官僚が決めることになる。それは、大きな力なのだ。経済対策で復権したのは麻生内閣だけでなく、それ以上に官僚のほうだといえる。

その経済対策が歓迎されたのは、経済に対する不安が大きくなっているからである。マスコミが危機を煽れば煽るほど不安は大きくなり、経済対策は歓迎される。マスコミが経済を煽ることは、官僚にとっては追い風となる。それを考えれば、プレッシャーをかけてこない理由もわかるというものだ。

マイナス成長を追い風にする官僚

そして5月20日、1-3月期の国内総生産(GDP)の速報値が内閣府から発表された。物価変動の影響をのぞいた実質で、前期比でマイナス4.0%、年率換算ではマイナス15.2%だった。戦後最大のマイナス成長だそうで、「たいへんだ~」という状況なのだ。ますますマスコミは、危機を煽ることになるだろう。さらなる経済対策が期待され、官僚は力を強めて、「やっぱりオレらがいなきゃダメよ」となる。役人にとっては、さらなる追い風なのだ。そう考えると、この戦後最悪の数字も「信じていいの?」といいたくもなる。

こんな状況のなかで、総選挙が近づいている。政治資金問題で小沢一郎氏は民主党代表の座を手放すことになり、民主党人気もガタガタになってきている。新代表に選ばれた鳩山由紀夫氏も代表戦で口にしていたが、民主党は「反官僚」を目指している、はずだ。しかし、その「反官僚」の旗は見え隠れし、「反二世議員」の旗ばかりが目立つ。体制を変えると豪語するからには、「反二世議員より反官僚でしょう」とおもうのだが、こちらがおもうようには動いていかない。

景気が悪くなればなるほど、経済対策は優先されなければならない。総選挙で民主党が勝って政権を自民党から奪取したとしても、その方向性は変わらない。となると、残念ながら、民主党政権になっても官僚抜きにはなりたたなくなる。官僚改革をやる前に、まずは経済対策を「やっていただかなければならない」からだ。あんまり反官僚を前面にだしていると、政権をとったときに官僚に仕返しされかねない。官僚改革に手をつけなければ、「選挙前に言ってたことと違うだろう」と国民から指摘されかねない。ここは、あまり反官僚の旗を振らないほうが得策、と考えているのかもしれない。

とはいえ、誰かさんの利益のために、あんまり不景気を煽られるのは、困る。マスコミだって、不景気で企業からの広告が激減して大惨状だ。非正社員に対する出費は削られる一方で、かくいう私も他人事ではなくなっている。ここらで、ちょっと冷静な判断というものが必要になってきているとおもうのだが、どうでしょうか。

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