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前屋毅の「世の中通信 ひっかき傷」

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民主党の小沢代表が辞任、しかし、何も変わらない

2009/05/12

5月11日、民主党の小沢代表が突然の辞任会見を開いた。「連休中に熟考した」そうだが、会見では辞任の理由がわからない。民主党関係者に訊いてみると、「世論に尽きるでしょう」との返事だった。

小沢氏の公設第1秘書が政治資金規正法違反容疑で逮捕されてから民主党人気に陰りがみえはじめ、代わって、麻生内閣の支持率がジワジワと上がってきていた。4月10日に新経済危機対策の政府案が決まると、それを好感して株価も上昇に転じ、内閣支持率もグンと伸びた。それは、まだまだ伸びる勢いだった。この「世論」の前に小沢氏は辞任を決意した、というのが先の民主党関係者の見方なのだ。民主党人気を落とす原因だった小沢氏が代表の座から退けば民主党人気が復活する、と考えたのだろうか。

もちろん、「国民を舐めてもらっちゃ困る」なのだ。秘書が逮捕された政治資金規正法違反について小沢氏は、「潔白だ」と言い切るものの、いっさいの説明をしていない。辞任会見でも、その姿勢は変わらず、まるで政治資金規正法違反とは無関係のような辞任発表だった。だから、「辞任の理由がよくわからない」と麻生首相にまでいわれてしまう。政治資金規正法違反と無関係なら辞める必要はないし、違反について国民が納得するような説明が、もしもできるなら、これまた辞めることはない。本人は「党のため」とカッコよく身を引いたつもりなのかもしれないが、「逃げた」としかおもえない。大半の国民は、同じような見方だとおもう。

党首対決から逃げた

ある人は、「党首会談をやりたくなかったから」だと辞任理由を推測する。2日後には麻生首相との直接対決を控えていたわけで、次期総選挙で政権奪取を狙う党の代表として、果敢に現政権を攻撃しなければならない。しかし、政治資金規正法違反の問題をもちだされれば、逆に劣勢になるしかない。そんな無様な姿を国民の前にさらしたら、それこそ民主党人気は地に落ちかねない。それは避けたかっただろうし、それくらい政治資金規正法違反は小沢氏にとって口にしたくない問題なのだろう。これも、やはり「逃げた」のだ。

小沢氏の辞任は、残念ながら、民主党人気につながっていくとはおもえない。ただし麻生首相も、これに気をよくしてばかりもいられないはずだ。新経済危機対策が好感をもたれたといっても、実質的に動きだしたわけではない。景気が実質的に浮揚しているわけではないのだ。日経平均株価は上向きになったといっても、企業の業績が上がったとか、上がりそうな具体的な動きが見えてきた、というわけではない。新経済危機対策を政府が決めたことで、「気分がよくなったような気がしている」だけの現象にすぎない。風邪をひいて医者に診てもらって薬を処方してもらったことで気分が落ち着いただけで、その薬が効くかどうかは飲んでみなくてはわからない。それと同じことだ。効かないとなったら、麻生内閣の支持率は再び急降下するだろう。

小沢氏が辞任しても疑惑が晴れたわけではないので民主党の人気も戻りにくいし、麻生内閣の支持率も新経済危機対策による気分だけの効果が薄れてくれば、どうなるかわかったものではない。何も変わっていない。ただ、ただ、上っ面だけで騒いでいるような政局というものが、いまひとつ面白く感じられない、のだ。

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