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前屋毅の「世の中通信 ひっかき傷」

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豚インフルエンザとゴールデンウィーク

2009/04/28

4月27日、世界保健機関(WHO)は豚インフルエンザの世界的大流行(バンデミック)に備える警戒レベルを「フェーズ3」から「4」に引き上げた。「4」は「人から人への感染が増加」する新型インフルエンザとされたことになる。驚異は高まった。

一方で、日本はゴールデンウィークに突入したばかり。ゴールデンウイークを海外で過ごす旅行客の出国ラッシュが早くも25日に始まり、ピークは5月2日で、帰国ラッシュのピークが6日になるという。その海外旅行者は前年比4%増の約96万人が見込まれている。オイルサーチャージが大幅に値下げになったこともあるが、リーマンショックによる不景気感がやや弱まったためでもあるようだ。

この大勢の海外旅行者が豚インフルエンザを理由に旅行を取り止めるかといえば、そんなことはないだろう。知り合いの航空会社関係者も「影響ない」と断言した。それに対して「感染の可能性があるのに自覚が足りない」と非難するのは簡単だが、それは「当事者」ではない立場からの発言にほかならないのではないだろうか。自分がゴールデンウィークに海外旅行を計画している当事者であれば、「気になるが、やはり行く」となるとおもう。そうそう休みもとれないし、経済的にも何度も海外旅行ができるほど余裕はないし、なにより、かなり前から計画して楽しみにしていた旅行である。簡単に中止できるものではない。やっぱり、旅行にでかけるにちがいない。

とはいえ、不安を捨て去ることはできないだろう。せっかくの旅行も不安を抱えたままでは、楽しみが半減するかもしれない。空港や機内での検疫に腹をたてる人も少なくないだろう。やってるほうだって、やりたくてやっているわけではない。そうした両者の荒だった気分が、余計に気のふさぐ旅行にしてしまうかもしれない。まったく病気ってやつは、人騒がせなものだ。

ワクチンはいつ手に入る?

厚生労働省は豚インフルエンザウイルスの感染予防策の一つとして、新たなワクチンを製造する「検討」を始めたという。製造を始めたわけではなく、検討を始めたのだ。製造には少なくとも数カ月かかるというから、検討が終わって製造が始まるころには、豚インフルエンザも収束しているか、はたまた大変なことになっているかもしれない。

新たなワクチン製造には海外から種ワクチンのウイルス株を入手し、それを増やすために必要な鶏卵の確保や、製造ラインを確保するために季節性インフルエンザのワクチンづくりを縮小するか、中断する必要がある。急いで製造にとりかかって、できあがったころに必要がなくなったとなれば、ムダになりかねない。だから、「検討を始めた」にしかならないのだろう。警戒を呼びかける厚生労働大臣の深刻な表情とは違い、なんとも「腰の引けた姿勢」を感じないわけにはいかない。

旅行者の不安も、政府が積極的な姿勢で取り組み、「もしも」の場合でも対応できる体制が整っていれば、不安も半減するというものだ。そういう政府の積極姿勢がみえないからこそ、不安は大きくなるばかりだといえる。「自己責任で身を守れ」というのが基本ではあるのだが、それだけを押しつけているような政府の姿勢には苛立ちをおぼえてしまう。

ゴールデンウィークを海外で過ごす多くの人たちが、豚インフルエンザの影響をうけることなく、できるだけ楽しむことができるように祈るばかりだ。

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