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みんな、最初は、ぜんぜんだめだった。。

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畑村洋太郎さんの巻。

2009/04/23

新聞とかテレビで、毎日のように
頭ぺこぺこ下げてる人たちを目にします。

「男はあんまり頭ぺこぺこ下げるもんやない」って
高校時代、担任の先生(=レスリング部監督)から言われたものですが、
最近は、
会社のエライさんから芸能界のスターさんまで、
不祥事やら逮捕やら
ぺこぺこのオンパレードであります。。

昔も、こんなだったっけかなあ?

謝罪会見なんて、
高校時代(=30年前)に見た覚え、あんまりないんだけど。
今の世の中、
ミスったときは速攻でぺこぺこしないと
誰も許してくれないんでしょうか。

キツイなあと思います。

わたしも
失敗とか粗相したときは「すみません」と
すぐにぺこぺこするほうですが、
気分が落ち着かないうちにぺこぺこしてしまうと
なお気分が落ち込んじゃいますよ。

落ち込んでいるときに
メディアで責任追及され
謝罪会見に引っ張り出されてのぺこぺこは
キツイでしょうねえ。

そんなあわてて会見しなくても
しばらく時間を置いて
もろもろ落ち着いてから改めてぺこぺこしてもらえば
わたし的には全然OKじゃないかと思うんですけど。

たとえば企業不祥事が起きると
よく危機管理のコンサルタントとかいう人たちが出てきて、
謝罪の仕方なんかについてあれこれ言いますが、
会社のイメージダウンを防ぐためにどう謝るか
という視点からの話が多くて。

会見でペコペコ謝る人のストレスには
目が向いてないんだもん。

「失敗学」で有名な畑村洋太郎さんは
こんなこと言ってます。

程度に差はありますが、失敗したときには誰だってショックを受けるし傷つきます。本人は気づかないかもしれませんが、直後はエネルギーが漏れてガス欠状態になっています。こういうときに失敗とちゃんと向き合い、きちんとした対応をしようとしても、よい結果は得られません。大切なのは「人(自分)は弱い」ということを認めることです。自分が、いまはまだ失敗に立ち向かえない状態にあることを潔く受け入れて、そのうえでエネルギーが自然に回復するのを待つしかないのです。/不思議なもので、人はエネルギーが戻ってくると、困難なことにも自然と立ち向かっていけるようになります。これは人間がもともと持っている「回復力」の為せる業です。
『回復力』(講談社現代新書)34ページ

こないだ
ホームレスの方々の自立支援してる人を取材したんですけど、
その人も、
畑村さんと同じようなこと言ってました。

路上生活に困窮した人を
シェルターへ入れてあげると
「申し訳ない、すぐに仕事さがしますから」
と恐縮するんですって。
でも、その人は、
「いかんいかん、まず休め」
と諭して、
しばらくエネルギー充電させると。

苦しいときにも頑張って、一時的に無理をするというのは、確かに窮地から脱するひとつの方法です。ただし、この方法が使えるのは自分にまだエネルギーが残っているときに限られます。エネルギーがないときに頑張ろうとするのは、勝つ見込みの薄いギャンブルに身を預けるようなものです。エネルギーがそれほど残っていないのに、自分に負荷をかけ続けたら、あっという間にエネルギーがなくなってしまいます。その挙げ句、潰れて再起不能になっている人は現実にはたくさんいます。
『回復力』37ページ

畑村さんは、
エネルギーが回復するまで
苦しい場面から逃げ出したり、
失敗をしょうがないと考えたり、
人のせいにしたりしてもいい、
ということも本のなかで言ってます。

間違ったり、
失敗したりしない人なんて
どこにもいないし、
自分だってぺこぺこしなきゃいかんことを
いつ起こすかしれないんですからね。
人が失敗して
エネルギーダウンしてるときに
謝罪会見やれとか追及するのって、
いかがなものでしょう。

それにしても
畑村さんの「失敗学」ってすごいなあと
思います。
『回復力』のほかにも
畑村さん本、何冊も読みましたが、
いろんなこと教えてくれますよ。

畑村さん、
失敗との付き合い方を考えるうえで、
ベースになった出来事があるんだそうです。

私がまだ東大工学部の講師をしていた一九七〇年代のはじめのことです。/校舎内でお昼ご飯を食べているときのこと、突然、窓の外を大きな黒い影がさっと落下していくのが見えました。「えっ」と、びっくりした瞬間、続いて「ドスン」という何とも言えない重苦しい音が響きました。影の正体は飛び降り自殺をはかった学生でした。
『回復力』12ページ

当時、学生の自殺は社会現象になるほど多く、
東大工学部でも複数あったそうです。

自殺をはかった学生の大半は
うつ病を患っていたと知った畑村さん、
専門家に学び、
対応策を講じます。
そして
うつへの対応が
失敗との付き合い方を考えるベースになりました。

失敗が原因でうつになる人は大勢います。とくにそれが大きな失敗の場合、その人のふだんの性格などに関係なく、誰でもうつになる可能性があります。そうした場合は、周りも細心の注意を払う必要があるし、本人もそれを自覚して動かないと取り返しがつかなくなる場合があります。
『回復力』21ページ

これは肝に銘じておかないと。
けっこう怖いご指摘です。。

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